母ちゃんが宝くじ当てた話をする

2年前くらいのことだったか、

 

夕飯を食い終わった後、母ちゃんが新聞を広げたまま

 

「あれ? あれぇ?」

「当たってるわよねこれ? 当たってるわよねこれ?」

とか言っていた。

 

「そんなわけないだろ」

と言い残し、次兄はどこかに消えていった。

 

「な、何等当たっているんだい?」ゴクリ

「に、二等よ」ゴクリ

 

母ちゃん、視力が落ちたんだな

と思って私も確認した。

 

「あ、当たっている」ジュルリ

二等のところに、確かに手元の宝くじ番号が書かれていた。

 

いったいいくらなのか、

視線をドキドキさせながらよく見てみると、

二等は100万円と書かれていた。

 

んむむ、微妙な値段だな。

 

しかし、私は汚い人間だ。

どうにかしてこの100万円をいくらかふんだくってやれないもんかなと考えていた。

 

ジャイアンみたいに宝くじを奪うことしか思い浮かばなかったので、

何もできなかった……。

 

母ちゃんはそれからほどなくして銀行に向かった。

一応番号があってるかどうか、店先の売り場で確認してきてくださいとのこと。

 

それを終えてから銀行窓口の隅っこに通され、

 

いろいろアンケートを書かされたそうだ。

「お住まいの地域」とか「年齢」とかいろいろ。

たぶん、当たった人の傾向みたいなデータに使われるんだろう。

 

現ナマで持ち帰ることもできたそうだが、そのまま口座に預けた。

帰り道怖いもんね。

 

なんか窓口隅っこに案内されるときも

他の客の視線をすごく感じたって言ってた。

 

こうして我が家に100万円が飛び込んできた。

 

それから宝くじの購入先に行ってみると

「うちの売り場で二等が当選しました!」

みたいな感じの貼り紙が当選番号とともにそれなりのサイズで貼られていた。

 

特におこぼれはもらっていない。

賞金はお墓を買うお金の一部に充てられた。

 

そんなわけでときどきどこかで

この話を自慢話の一部として使っている。

 

自慢できるものが少ないんだ、許してくれ。

 

「うちの息子はねぇ、甲子園に出たことあるのよ~」

甲子園に出た球児の親はきっといろんなところで話すだろう。

 

そんなわけで私も母ちゃん自慢をさせていただいた。

 

このまえ、母ちゃんの使ってるPASMOせがんで持って行ったら

玄関で

「あんた、ヒルみたいね……」

って言われた。

 

ごめんよ、母さん……

 

おしまい