部屋の掃除してたら昔の携帯が出てきた
さて、タイトルの通り昔の電話が出てきたんだが
浪人のときから大学2年の冬くらいまでやつ。
電源をつけてフォルダを漁ってみると
オムライスに『幸』とケチャップ書きした写真が出てきた。
この写真は浪人時代センター試験直前に撮ったもの。
予備校に行っても友達ができず、さみしくてさみしくて爆発しそうだったあの時期だ。
当時の思い出がよみがえってきた。
センター試験直前の月曜日。
予備校をサボり、ラーメン屋に入った。
客は自分ひとり。
店員もひとり。
バンダナ巻いて禿げてて眼鏡かけてるおっさんの豚骨ラーメンはうまかった。
「いや、すごくうまかったっす」
ぼくはおっさんに向かって感謝の言葉を口にしていた。
それを機におっさんとぼくとのやりとりが始まっていく。
ぼくが浪人していること
予備校にいっても友達がいなくてさみしいこと
センター試験前で不安がいっぱいなこと
思いの丈を今日初めて会ったおっさんにぶつけていくのだが、
おっさんはやさしく笑って耳を傾けてくれた。
時刻は3時頃だったと思う。客が一向に来る気配がなかった。
「おじさんは3流大学出ちゃったから学歴には負い目があってね。だけどお兄さんはきっと大丈夫。頭もよさそうだし。結果が分かったらもう一度おじさんのラーメン食べにおいでね」
おっさんに勇気づけられて店を出た。
いい人に会えた。受験もこれで頑張れそうだ。
2か月半後の大学登校日初日。
同級生と思われる面々は髪の毛が赤かったり、
体格がよくてひげがボーボーみたいなのがチラホラいた。
(とんでもないところにきちまったなこれは…)
帰り道、重い足取りで例のラーメン屋に入る。
先客は一人。カウンターの向こうにはあのときと同じオッサンが立っていた。
豚骨ラーメンの食券を渡す。
「久しぶり」
「あ、どうも…」
会話少なめですこしすると、豚骨ラーメンが運ばれてくる。
「どうだった?」
「××大学です……」
「がんばったねぇ~。そこ、おじさんと同じ大学」
「あ、そうなんですか…アハハ……」
ぼくは豚骨ラーメンをささっとかきこみ、店を出た。
背中の方から「また来てね」と声が聞こえたが、返事はしなかった。
あれから7年経った。
部屋の片づけは飽きたので途中でやめた。
おしまい