「お前、オールスターに選ばれたらしいぞ。しかもセパ両軍から」  「えっ?」

「お前、オールスターに選ばれたらしいぞ。しかもセパ両軍から」

え、そんなことあるんだ。

 

「お前はパリーグに行ったほうがいいと思うな」

兄弟で一緒になるの嫌なんだろうな。

 

だが、そんなの関係ない。

セリーグのほうが東京から近い球団ばかりだし、

今日の練習場も近いし、

そっちに行ってみることにした。

 

電車内。

人気投票上位になったはずなのに、

誰も私のことを注目してくれなかった。

 

練習場につくと野球ファンがたくさん。

そこでも気づかれることはなかった。

 

グラウンドへの入場の仕方がわからなかったので、

フェンスをよじ登っていくことにした。

 

ひょっとして自分は野球選手ではないんじゃないかと思案したが、

警備員にも止められることがなかったからきっと大丈夫。

 

フェンスを登って降りて、ベンチに到着。

既に練習は始まっていた。

 

内川とか柳田とかがいた。

ヒーローインタビューとかバラエティ番組とかではニコニコしてるのに、

殺伐とした雰囲気だった。

 

 

「工藤監督、遅れちゃったんだけど、僕何の練習すればいいすか?」

「ん、ああ君か。君はパリーグのほうの練習場に行ったほうがいいな。

 愛媛でやってるから。」

 

「あ、はい。」

監督の命令は絶対だ。

フェンスを登って降りて球場を去り、電車に乗った。

 

電車の中。

家に帰ろうかと思ったが、球宴をサボることはできない。

サボったら罰金であり、それだけで自分の年収を上回りそうだ。

 

「山川 オールスター」

でググった。

 

出てきたのは

西武・山川のフレッシュオールスターの記事ばかり。

(おれは穂高じゃねぇ……)

 

自分の名前をググってみても

Facebookでそっくりな人の名前しか出てこない。

 

wikipediaにも自分の名前は存在していなかった。

 

 

おしまい